2020-09-01
[コラム]現役エンジニアからの手紙<第2回>
Teruhito Fukuoka
え⁉︎ 仕事に英語いるの?
こんにちは、福岡輝人です。前回に引き続きアメリカ赴任体験談を書かせていただきます。
私はそもそも理系科目の方が得意と言うこともあり、英語に関して高校ではたいして勉強せず、大学も私立理系だったので最低限、ですので初めてのTOEICの点数は370点! そんな調子なので正直社会人になってからも、自分が海外に赴任して仕事するなんてこと、想像すらしていなかったです。今回はそんな私がどうして海外赴任するまでになったのか、そして赴任してからの英語は? を紹介させていただきます。
きっとTOEICの点数を見て、これじゃあいかん英語をマスターするんだ! と一念奮起したんじゃない、と想像された方、残念ですが仕事上必要に迫られて、しかも最初のTOEICからしばらく経ってからというのが実情です。
最初のきっかけは社会人になって5年経った時、当時担当していた製品を提携会社のイタリアの工場で生産する話が持ち上がったことでした。製品を生産するためには、まず設計図が必要です。日本で生産はしているのでもちろん設計図はあるのですが、当然日本語オンリー、イタリア語はおろか、英語にもなっていません。当時一番下っ端だった私に、上司から「他の仕事は中断していいから、設計図約100枚+関連資料(これも100ページくらい)、1カ月で英訳しろ(一人で!)」と、指示されたのがそもそも全ての始まりでした。
私の英語力はご存知の通り、技術英語なので普通の英語とは少し違いますが、周囲も含め誰もそんな経験はなく、ほぼ誰の手助けも期待できない中、当時はネット翻訳もなく、辞書と専門書を片手にヒイコラ言いながらなんとか訳しました。その後は、実際に海外生産を進めるのに打ち合わせ資料を英語で作り、英文メールで現地とやりとりし、最終的には実際に現地にも何度か出張し、ようやく英語の必要性というものに目覚めた感じでした。そこからは英会話レッスンも受け、TOEICも650点までは上がりました。
その後、今の会社に転職してまたしばらく英語からは離れていたのですが、今度はアメリカの某自動車メーカー向けに製品を開発する話が持ち上がりました。
当時アメリカの支社には現地採用スタッフはいたのですが設計実務経験はあまりなく、実際に設計経験のある専門知識を持った人間を日本から寄越してほしいという依頼がありました。経験の少ない現地スタッフだけではその場その場での対応が困難、日本とアメリカ直での電話会議等は時差が13時間あり昼夜逆転になるため難しく、現地で対応できる人材が必要だったためです。
本当は同じグループの他の人が第一候補だったのですが、家庭の事情で行けなくなり、私におはちが回ってきました。正直、流ちょうにしゃべれるとは思っていませんでしたが、過去の経験から、なんとかなるだろうと高をくくって軽い気持ちで決めた、というのが赴任に至る経緯です。
じゃあそれで現地でしゃべれたか? 聞けたか? というと、これまた全くダメでした。英文メールでやりとりできても資料が作れても、その場での英会話は全くダメ。とっさには言葉が出てこない、聞こえない、というのが実際でした。
日本語のわかる現地スタッフが付いてはくれましたが、ずっと一緒というわけにはいきません。では会話できない中、どうやって仕事していったのか?
しゃべれない、聞こえない、私には電話が一番難しかったです。だから、普段のお客さんとのやりとりは基本メールでした。メールなら下手な文章でも時間をかければ書けますからね。でも週1回直接の打ち合わせが半日あり、そこでは説明・会話しないといけません。どうやったかというと、会議で使うパワーポイントの資料に、とにかく言いたいことをできるだけ書き込んで説明する、というスタンスで臨みました。それで大体のことは、なんとかしていったのですが、想定外の質問をされると、聞き取れない、パッとは返せないという状態でした。私がラッキーだったのは、担当の方が優しく、海外赴任の経験のある方で、外国人とのコミュニケーションについて経験があり、しゃべる時はゆっくりわかりやすい言葉でしゃべってくれましたし、私がしゃべる内容も我慢強く聞いてくれました。そんなこんなを続けて、多少ゆっくりでもそれなりの受け答えができるようになるのに半年くらい、さらに面と向かって(Face To Face。F2Fなんて略します)なら大概大丈夫と自信が持てたのは3年ぐらい経ってからでしょうか。
そんなにかかるの? と思われるでしょうが、これは、いかに日常の中で英語を使うかにもよると思います。私の場合はそもそもの英会話能力の低さが原因ですが、会社の事務所では現地スタッフを含め基本日本語で会話でき、英語は最小限で済んだので、よりキャッチアップ(修得)に時間がかかったのかもしれません。
結局のところ私が学んだのは、間違っていても少々文法がおかしくても構わない、どんどん英語で会話することが何よりの英語上達方法だということです。それと、会話にしろ、メールにしろ、現地人のマネをしましょう。ああ、こんな時、こういう言い回し・使い方をするんだ、というものが結構ありますよ。(次回に続く)
執筆:福岡輝人
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写真:左上/空から見たミシガン州、右上/雪かきが欠かせないアナーバーの冬、左下/住んでいたアパート、右下/Brewer(醸造所)直営の飲み屋さん
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