NIE「新聞を読もう」活動

英語力をつけるために、日本語力を強化する

NIE (Newspaper in Education)

「新聞を読もう」活動

あすなろ開校以来、小学生高学年から高校生の生徒全員が新聞記事を読み、その要約と感想を書く活動に取り組んでいます。これは語学の根幹を形成する日本語力を底上げするためであり、英語の作文能力を向上させる基礎を作り上げるための活動です。

新聞記事の要約と感想をまとめるのは日本語で行います。教師は生徒が十分文章を推敲するように促し、正しい日本語で正確な文章となるまで何度も添削をします。また、使用する語彙にも注意を払い、生徒が新しくより高度な語を習得するように指導します。生徒には、完璧な内容に仕上げるまで、繰り返し書き直しが課せられます。文章を書きっぱなしにするのではなく「推敲」を重ねることによって、文章力は飛躍的に向上します。よく「あすなろの生徒さんは皆、文章力が高い」とお褒めの言葉を頂きますが、それは、このような活動に地道に取り組んでいる生徒さん自身の努力の賜だと思います。

その結果が顕著にあらわれた、ある一つの記事の推敲前と後の文章を是非お読み下さい。中学2年生の作品です。


Before

最近、トイレの混み具合がスマホやタブレットで分かるという便利なことがある。しかしそれに馴れすぎて、子ども達の知能は伸びないし、大人はぼんやりした創造性のない人格にしかならない。人間には現在ないことを予測する力がいる。予測とは、どのような悪いことが起きるかを空想できる力である。それがなければ、警備、安全保障などあらゆる事が不可能だ。人間は大方いい人なのだが、人を信じない、という教育もまた必要なのである。立派な社会教育というのは、労力とわずかな脳みそを使って、人の裏をかくことなのである。

(曾野綾子・著 新聞のコラムより要約)

After

最近、トイレの混み具合がスマホやタブレットで分かるという便利なことがある。「空いているトイレがどこか」には一つの原則がある。人が使いにくいと思う場所を探すことだ。階段を1階から2階に上がるだけで必ずそれがある。劇場のトイレのどこが混んでいてどこか空いているかも推測できない人には、おもしろい創造的な人生は送れない。才能を開発しないような過剰サービスをすることは、若い人の精神を育てるには害毒になる。便利さに馴れすぎると、子ども達の知能は伸びないし、大人はぼんやりとした創造性のない人格にしかならない。人間には現在ないことを予測する力が要る。予測は主に、どのような悪いことが起きるかを空想できる力である。それがなければ、軍備はもちろん、警備、安全保障あらゆる事が不可能だろう。労力とわずかな脳みそを使って、人の裏をかくことも立派な社会教育なのである。


この活動では、生徒に感想も書いてもらいます。その折に「大人が喜ぶような意見を書く必要はない。素直に思ったことを自分の言葉で書きなさい」と一言添えます。記事の内容を批判してもよいし、擁護してもよい。そうすることによって、考える力が育つと思うのです。ただし、助詞の使い方や同一語彙の重複など、文章そのものの構成は厳しく指導しています。

日本語の文章が上手くない人が、達者な英語の文章を書くことはできません。その意味においても、英語だけではなく語学の総合的な力を上げていくことが大切だと考え、「新聞を読もう」活動を続けています。